歯周病(歯槽膿漏)

歯周病(歯槽膿漏)

歯周病とは

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歯周病は歯を支えている組織が破壊されていき、進行すると歯を失う病気で、歯槽膿漏とも呼ばれますが、最近、数十年の研究で細菌による感染症であると明らかになってきました。虫歯も進行すると歯を失う原因になり得ますが、こちらは、歯そのものが破壊されていく病気です。この2つの病気に共通なところは、細菌による感染症であるということです。
歯周病菌は、初めに人から人へと感染し、歯と歯肉の境目にある歯周ポケットに入り込んでいきます。歯周病菌はここで増殖し病原性を発揮しながら増殖し、歯肉に炎症を起こし歯と歯肉の付着部を破壊して、歯周ポケットを深くしていきます。そしてその先にある歯槽骨(歯を支えている部分の骨)や、歯根膜を徐々に溶かしていきます。
このため、歯周病を改善するには歯周ポケット付近のプラークを減らすということが、一番大切なことです。
また、歯石はプラークが唾液に溶けているカルシウム分等により石灰化し、硬くなったものですが表面がザラザラ・デコボコしているため、表面にプラークを付着させ、取れにくくしているため、これも歯周病の原因といえます。
プラークは軟らかいため、歯ブラシ等により除去することができますが、歯石は硬いため歯科医院で除去することが必要です。この他歯周病を悪化させる因子としては、下記のようなものがあります。

歯周病を悪化させる因子

  • ●タバコ 喫煙をしている人は、歯肉内部の血行が悪くなり免疫機能が低下し、炎症により破壊された組織の修復能力も低下するため、歯周病を進行しやすくなります。
  • ●歯にかかる過剰な力 「歯ぎしり」や「食いしばり」のことです。これらの力は通常、物を噛むときの何倍もの力を歯周組織に加えることで、ダメージを与えていきます。そしてこの蓄積が歯周組織を破壊し、歯周病を進行させます。
  • ●糖尿病 糖尿病と歯周病はお互いに密接な関係を持っており、糖尿病のコントロールが悪いと歯周病を悪化させる原因となります。(詳しくは”歯周病と全身疾患”の部で述べます)
  • ●薬物の副作用 フェニトイン(抗てんかん薬)やニフェジピン(血圧と不整脈の治療薬)等のカルシウム拮抗薬では副作用として歯肉の増殖がみられる場合があります。
  • ●女性のホルモンバランスの変化 女性ホルモンのプロゲステロン(黄体ホルモン)やエストロゲン(卵胞ホルモン)のホルモンバランスの変化や、妊娠中のつわりなどによりプラークコントロール悪化などが歯肉の炎症を悪化させます。
  • ●口腔乾燥症(ドライマウス) 唾液が減少することで細菌に対する抵抗力が弱くなり、歯周病が進行しやすくなります。
  • ●遺伝 細菌に対する免疫が弱く、歯周病になりやすい体質などが遺伝する可能性があります。

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歯周病と全身疾患

歯周病と全身疾患イメージ

歯周病は、歯肉に炎症を起こさせ、出血しやすくしますが、このために歯周病菌が血管内に入り込み、全身を廻ることで様々な病気の原因になります。
ここでは、歯周病と関わる病気の一例をご紹介します。

糖尿病

糖尿病とは、膵臓で産生されるインシュリンというホルモンが減少、もしくは消失することで血糖値が上昇し、この状態が長く続くことにより網膜症、腎症、神経障害、動脈硬化などを合併症として引き起こす病気ですが、歯周病とも大きな関連性をもっています
糖尿病になって高血糖状態が続くと、歯周組織内の毛細血管では、白血球機能の低下やコラーゲン破壊機能の促進、およびコラーゲン合成阻害が起き、血管壁も変性を起こします。
このため、糖尿病のコントロールが良くない場合は、歯周病がどんどん悪化しやすいのです。コントロール状態の目安としてHbA1C(血糖値の平均値を表す数値)7.0%以下を目指しましょう。

また、糖尿病と歯周病の関連性を示すものとして「TNF-α」が注目されています。TNF-αは高血糖状態の時にできる炎症物質で、コラーゲンを破壊します。ところがこのTNF-αは、歯周病病巣でも産生され、血管内に入ってインシュリンの働きを弱め、糖尿病を悪化させることがわかってきました。
多少難しい話になりましたが、簡単に言いますと、糖尿病の悪化は歯周病を悪化させ、この逆もあるということなのです。ですから、歯周病を治療することが、糖尿病の改善にも繋がるということなのです。

心臓病

歯周病菌が血管を経由して酸素や栄養を心臓に送る冠状動脈に到達すると、血管壁にはりついて血栓を作ったり、血管の脂肪変性を起こし、その結果冠状動脈を詰まらせ、虚血性心疾患である狭心症心筋梗塞を起こす原因になります。 また、歯周病菌が心臓の内側にある弁に感染すると、細菌性心内膜炎を起こします。

脳梗塞

前述した虚血性心疾患と同じ原理で、脳の血管を血栓により閉塞させ脳梗塞を起こします。

肺炎

高齢者等自律神経の働きが低下した方が、誤嚥(唾液や食べ物が、誤って食道ではなく気道に入ってしまうこと)を起こすと、気道内に入り込んだ歯周病菌が肺で炎症を起こすことがあり、これを誤嚥性肺炎と呼びます。

早産

血液によって運ばれた歯周病菌が羊水の中に入ることにより、免疫細胞は胎児を守るために歯周病菌を攻撃しますが、これが羊膜腔や胎盤膜に作用し、子宮の収縮や子宮頚部の拡張を引き起こし、早産に繋がると考えられています。
また、妊娠中の女性ホルモンを栄養にしている歯周病菌もあり、妊娠を考えている女性の方は、日頃よりお口の健康に気をつけておくことが大切です。

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歯周病の検査と診断

歯周病の検査と診断イメージ

歯周病は、普段は痛みもなく経過し、あまり自覚症状もなく悪化していく場合も多い病気です。以下に歯周病が疑われる症状を挙げてみますので、あてはまる方は早めに歯科医院を受診して下さい。

  • ●歯がぐらぐらする
  • ●歯磨きのとき出血する
  • ●口臭がある
  • ●歯内に真っ赤な部分がある
  • ●歯が浮いている感じがする
  • ●疲れると歯肉が腫れる、痛む
  • ●歯が長くなってきた気がする
  • ●前歯が重なってきたり、出っ歯になって
     隙間が開いてきた

以上の症状にあてはまるものが多いほど、歯周病の疑いが強いといえます。ただ、重要なのは歯周病が否かということよりもその程度、つまり進行度です。なにしろ歯周病は成人の80%以上が罹患しているといわれる病気なのですから。
歯科医院においては、以下のような検査を行って歯周病の進行度を調べていきます。

歯周組織検査

以下の4つの検査を組み合わせて、歯周組織の状態を総合的に診断します。

  • ●歯周ポケット測定 プローブと呼ばれる下の写真のような器具で、歯周ポケットの深さを測ります。歯周ポケットが1~2mmの場合は健康な状態、4mm以上は病的な状態といえます。そして、深くなればなるほど重症度が増していきます。
    治療により歯肉が回復すれば、歯周ポケットの深さは減少していきます。逆に、年月とともに歯周ポケットが深くなっていると、歯周病は進行(悪化)していると判断します。

    プローブ

    歯周ポケットイメージ

  • ●出血状態 歯周ポケットの深さを測るために、プローブを歯周ポケットに差し込んだ時の、出血の有無を検査します。歯周ポケットの中でプラークに感染している場所は、プローブの先が触れただけで出血します。逆に、炎症のない場所では出血しないので、これを区別していきます。
  • ●動揺度検査 歯周病は歯を支えている骨が溶けていく病気なので、骨が溶ければ歯はグラグラ動き出します。この程度を調べる検査です。生理的範囲の動揺(グラグラ動いていない状態)を0度として、高度の動揺を3度までの、0~3度の4段階に分類します。
  • ●プラーク付着検査 歯の面を4つの面に分け、それぞれの面にプラークの付着があるか否かを調べます。歯周病は何度も述べているように、プラークの感染症です。
    それ故に、プラークの除去、すなわちプラークコントロールが一番大切です。プラークの付着総面数を総歯面数で割り、100を掛けてパーセンテージで示します。目標は20%以下ですが、これがなかなか難しいのです。

レントゲン検査

歯周病は、歯を支えている歯槽骨が溶けていく病気ですが、肉眼では見えない部分です。これを画像化して見るのがレントゲンです。骨が溶けている状態の量や形態を見ることで、歯周病の進行度や原因を調べることができます。
通常は①と②の検査を組み合わせることで、総合的に歯周病の状態を把握します。この他、必要に応じて口腔内写真スタディモデル(歯型)による各種検査も行います。

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歯周病の治療

歯イメージ

歯周病が、プラークの中の歯周病菌による感染が原因であることは、これまで述べてきた通りです。この原因をできるだけ無くしていくことが、治療の目的になります。すなわち、お口の中から歯周病菌を減らし、その住処(歯周ポケット)を小さくしていくことが、歯周病治療の目的といえます。この目標達成のためには、患者さん本人と歯科医院スタッフの協力による、二人三脚が不可欠です。
先に行った検査診断に基づいて、歯周病の状態を把握し、治療計画をたてます。

動機付け

まず、行った検査に対して現在の状態(歯周病の進行度)について説明します。歯周病は生活習慣病であるため、歯科医院でどんなに原因の菌を除去しても、現在までの状態に至った習慣がそのままであれば治療効果は半減し、良い結果は望めません。
このため、日常生活でどのような事に注意して、どのような点に気をつけてプラークコントロールを行えば良いかをお話します。

歯周初期治療

初期治療では、歯周病の主原因であるプラークの除去、及び根面に付着している歯石などの局所因子を取り除く治療を行います。

  • ●口腔清掃指導 第1は、口腔清掃指導ですが、患者さんご自身に行っていただきたいのは、歯肉縁(歯と歯肉の境目)のプラークをしっかりと落とすということです。
    歯周ポケット深部のプラークコントロールは、歯科医院側の仕事ですが、いくらこれを行っても歯肉縁からどんどん歯周病菌が供給されれば、歯周病の治癒は全く望むことはできません。
    ここでは、歯科衛生士が患者さん一人一人の口腔状態に合った清掃方法や、清掃器具の選び方、使い方についてアドバイスをします。
    歯周組織検査で歯周ポケットが深かった部分や、出血がみられた部分は、特に注意してブラッシングを行う必要があります。指導に耳を傾け、「磨いている」ではなく「磨けている」すなわち「プラークが取れている」状態にしましょう。
  • ●スケーリング・ルートプレーニング 第2は、「スケーリング・ルートプレーニング」です。これは、歯肉縁から下のプラークや歯石を除去し、根面を骨沢にするプロによる清掃になります。
    スケーリングとはプラークと歯石を除去することです。歯石はプラークが唾液に溶けているカルシウム分で石灰化し、鍋の焦げ付きのように硬くくっついたもので、ブラッシングでは除去することができません。患者さんのブラッシングがしっかりと行えていると、スケーリングを行った後は、歯肉の赤みがとれて改善がみられてきます。
    スケーリング終了から一週間から十日ほどの治癒期間をおいて再度検査を行います。この時点で、歯周ポケットの深い部分、出血の見られる部分は、ルートプレーニングを行います。
    ルートプレーニングとは、ポケット内の歯周病菌に感染した部分のセメント質を除去して、表面を滑沢にして、プラークのつきにくい表面にして、根の表面から剥がれた歯肉を再付着させ、歯周ポケットを減らすための治療です。
    この治療は歯周ポケットの深い部分に対して行う治療のため、通常局所麻酔下で行います。

再評価

歯周初期治療が終了したあとの適切な治癒期間をおいて、検査を行います。検査の結果により、治癒とするか、改善しない部位には歯周外科治療を行います。

歯周外科治療

これまでの初期治療で改善困難な部位に対して行う外科的な治療です。この治療の目的は、スケーリング、ルートプレーニングではどうしても取りきれない歯石やプラークを、歯肉を切開して明視野において取り除くことです。
そしてもう一つの目的は、歯ブラシの届きにくい部分の骨の形態を整えたり、再生医療の技術を使って歯周組織の再建をはかることです。
歯周組織再生法には、GTR(Guide Tissue Regeneration)法といって、メンブレンという特殊な膜を使って新しいセメント質を誘導する方法と、エムドゲイン法といって、セメント質を誘導するエナメルマトリックスタンパク質を抽出した物質EMD(Enamel Matrix Derivative)を根面に塗布する方法がありますが、どちらもきちんとプラークコントロールが行われていなければ、歯周病は再発します。

再評価・メインテナンス

全体の治療が終わった時点で検査を行います。症状が治癒・安定していれば、メインテナンスに移行します。メインテナンスでは定期的にPMTC(Professional Mechanical Tooth Cleaning)を行って、歯周病の再発を防いでいきます。
(詳しくは予防歯科「PMTCについて」をご覧下さい)

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