当院では、通院困難な患者様のための訪問診療を行っております。
《訪問診療とは?》
訪問診療とは、歯科医師、および歯科衛生士が、治療用ポータブルユニットを持参して、通院困難な患者様の歯科治療を、ご自宅や施設などの生活の場に伺って行うものです。
《対象者は?》
保険診療である訪問診療は、対象者は疾病や傷病による通院困難な患者様と定められています。通院が容易な方は対象となりませんので、外来での受診をおねがいします。また、要介護状態区分のみに基づくなど形式的に決められるものではなく、歯科医師が個々に適正に判断することになっています。また、高齢者でなくても骨折のため歯科医院への通院ができない方なども対象になります。詳しくは、当院までご相談ください。
《どんなことが、できるの?》
歯科用ポータブルユニットを持参しますので、通常歯科医院で行っているような治療が可能になります。
- 入れ歯治療~入れ歯の修理、調整、新規製作
- 虫歯治療~虫歯の詰め物・かぶせもの等
- 歯周病治療~歯石の除去など
- 口腔ケア~ご家庭では難しいお口の中の清掃
- 簡単な抜歯等
※高度な外科処置などは、(訪問診療では)行っておりません。

むし歯や入れ歯の切削、スケーリング(歯石取り)、バキューム機能などがコンパクトに内蔵されています。
《訪問先は?》
訪問先は、施設や居宅など患者さんが療養している生活の場です。簡単に言えば「患者さんが寝泊りしている場」です。このため、デイケアやデイサービス等の通所施設には訪問できません。また、歯科の標榜のある病院にも訪問できません。
訪問可能な場所の例として、患者様居住の住宅の他、老人ホーム、グループホーム、特別養護老人ホーム、介護老人保健施設、介護医療院、歯科のない病院等があります。
《保険はきくの?》
基本的に、保険診療になります。健康保険の他、介護認定の方は、介護保険もお使いいただけます。治療費1割負担の方の一回の治療費の目安は2,000円位です。歯科医院が算定する介護保険の居宅療養管理指導は、ケアプランの対象外です。限度基準額いっぱいまで介護保険をご利用の方も、別枠として歯科訪問診療をご利用いただけます。
《準備するものは?》
健康保険証、介護保険証、介護保険負担割合証など。(寝たきりではなく)体を起こした状態で治療ができる方は、リクライニングのできる頭部が安定する椅子があると治療がスムーズに行えます。また、治療にあたって、電源とお水(治療用とうがい用)をお借りします。
《訪問診療の前に》
まずは、訪問先に伺って問診をさせていただきます。
- 患者様にとって一番お困りのこと、改善したいことを教えてください。(入れ歯が合わなくて食べられない等)
- 過去の病歴、現在治療中の病気や体の具合、飲んでいるお薬等を教えてください。
- かかりつけ医、ケアマネージャー、訪問看護師のお名前・連絡先を教えてください。
- 治療で使わせていただくお部屋の環境について確認させてください。
《口腔ケアの重要性について》
ある大学病院でのお話です。院内感染対策が万全の大学病院において、心臓手術後の患者様がことごとく発熱するという事例がありました。このケースでは看護師が手術前後の口腔ケアを開始したところ、発熱はほぼ無くなったとのことです。
これは、手術後に体の抵抗力が低下したところに加えて、ご自身でのブラッシングができない時期が重なり、普段悪さをしなかったお口の中の日和見菌までが、全身炎症の原因になった例です。
手術後でなくとも、高齢者は体の抵抗力が徐々に低下していきます。
抵抗力の下がった人のお口の中で増加した細菌は、むし歯、歯周病の悪化、口臭の原因、口腔機能の低下につながるだけではなく、気道を通して肺へ・・・・誤嚥性肺炎
歯周ポケットから血管内へ入り、全身へ・・・・・脳梗塞、狭心症、心筋梗塞、糖尿病、アルツハイマー型認知症の発病や悪化など全身の病気へとつながっていきます。
ご家庭などでは十分にできにくい口腔ケアも、歯科医や歯科衛生士のプロフェッショナルケアにより、歯だけではなく歯周ポケットや舌等、粘膜の清掃を行うことで、お口の中の清潔を保っていきます。